不妊治療と双子妊娠の仕組みをわかりやすく解説①
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妊活お役立ち情報
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「体外受精は双子が多い」
そんな話を耳にしたことがあるかもしれません。
一般的には、双子や三つ子のように、 2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠すること を「多胎妊娠」と呼びます。
不妊治療の現場では、初診の段階で「将来的に子どもは◯人ほしいです」といった希望を伝えてくださる患者さんも少なくありません。その中で、まれではありますが「できれば双子がほしいです」とお話しされる方もいらっしゃいます。
また、卵子と精子の受精について説明すると、「卵子に2個の精子が入ったら双子になるのですか?」という質問をいただくこともあります。実は、この質問はとてもよく聞かれるものですが、 双子が生まれる仕組みとは少し違います。
そこで今回は、
・双子(多胎)ができる仕組み
・日本の多胎妊娠の現状
について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。
日本の多胎妊娠の現状

まず、日本ではどのくらい双子が生まれているのでしょうか。
現在、日本では 出生数全体の約1〜1.5%が多胎妊娠 と報告されています。そのうち95%以上が双子(双胎)です。残りの5%は三つ子以上の多胎妊娠です。
近年は体外受精などの不妊治療の増加に伴い、多胎妊娠の割合が増えたことも指摘されています。
今でこそ、体外受精でできた胚を子宮に戻す際には
「なるべく1個の胚を移植する(単一胚移植)」
という考え方が広く浸透していますが、20年ほど前までは、
「妊娠率を上げるために複数の胚を移植する」
という考え方も珍しくありませんでした。
現在でも、体外受精を繰り返してもなかなか妊娠に至らない場合などには、2個の胚を移植する(2個胚移植)ことがあります。
これは、胚同士の相乗効果で妊娠を期待する技術として使用されていて、2個とも着床させようと思って使用しているわけではありません。
ですから、「今まで1個移植して着床しなかったから、2個戻しても両方着床することは少ないだろう」と考えて行われるものの、実際には 2つとも着床するケース もあります。
その結果、診察室で医師から突然「双子ですね」と伝えられ、驚かれる患者さんをこれまで何度も見てきました。
治療にはガイドラインがあり、医療は科学に基づいて行われていますが、 妊娠にはまだ解明されていない神秘的な部分も多くあります。そのため、こうしたケースは決して珍しいものではありません。
なぜ多胎妊娠は避けられている?
「双子は嬉しいことでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし医療の立場では、 多胎妊娠はできるだけ避けるべき妊娠 と考えられています。その理由は、単胎妊娠と比べて 母体と赤ちゃんの両方にリスクが高くなることが知られているためです。
例えば、次のようなリスクがあります。
・早産
・妊娠高血圧症候群
・低出生体重児
・妊娠糖尿病
特に双子の場合、早産になる確率が大きく上がることが知られています。
そのため現在の不妊治療では、「赤ちゃんとお母さんの安全を第一に考える」という考え方のもと、 多胎妊娠をできるだけ減らすこと が重要な課題となっています。
卵子と精子が出会うまで

患者さんからよくある質問の一つに「卵子に精子が2個入ると双子になるのですか?」というものがあります。
しかし、精子が2個入ることと双子になることは全く別の現象です。
まずは受精の仕組みから見てみましょう。妊娠は、 卵子と精子が出会い受精すること から始まります。その流れを簡単に見てみましょう。
①卵子が育つ
女性の卵巣には、卵胞(らんぽう)と呼ばれる卵子が入った袋があります。月経が始まると、脳から分泌されるホルモンの働きによって卵胞が成長します。
通常、 1回の月経周期で成熟する卵子は1つです。
②排卵が起こる
成熟した卵胞は、卵子を卵巣の外へ放出します。これを 排卵 と呼びます。排卵された卵子は 卵管へ移動 し、精子との出会いを待ちます。卵子が受精できる時間は 排卵後およそ12〜24時間 と考えられています。
③精子が腟内に射出される
一方、男性の精子は毎日作られています。射精された精子は、最初は 数億個 います。
しかし
腟→子宮→卵管
と長い距離を進んでいく途中で、多くの精子が力尽きていきます。
④卵子と精子が出会う
最終的に、受精が起こる卵管まで到達できる精子はおよそ100個程度と言われています。
そして、その中の1つの精子だけが卵子の中に入り、受精が起こります。

なぜ、1つの精子しか卵子には入らないのか?

卵子には「1つの精子しか入れない」仕組みがあります。
まず、精子と卵子は、それぞれ1セットの遺伝子を持っています。受精すると、 2セットの遺伝子を持つ受精卵 ができ、父親とも母親とも異なる新しい生命が誕生します。
そして受精には大きなルールがあります。
それは
卵子に入ることができる精子は1つだけ
ということです。
卵子を囲む「透明帯(zona pellucida)」は、受精した瞬間に固くなり、他の精子が入れないようにする仕組みを持っています。これは 多精子受精を防ぐための重要な防御機構 です。
◯精子が2個入るとどうなる?

まれに、この防御機構が働く前に複数の精子が卵子に侵入することがあります。これを多精子受精と呼びます。
通常の受精では染色体は2セットですが、多精子受精では 3セット以上の染色体 になります。
その結果
・正常に成長しない
・成長し着床しても、妊娠初期に流産する
ため、 赤ちゃんとして生まれることはありません。つまり、 精子が2個入ったから双子になるわけではないのです。
では、なぜ双子が生まれるの?

では実際に、双子はどのようにして生まれるのでしょうか。
双子が生まれる仕組みは、大きく分けて次の2つがあります。
① 2つの卵子が排卵し、それぞれが受精する場合(二卵性双生児)
② 1つの受精卵が途中で分裂する場合(一卵性双生児)
それぞれ見ていきましょう。
①二卵性双生児
通常、排卵は1つですが、まれに2つ以上の卵子が同時に排卵することがあります。この2つの卵子がそれぞれ受精し、両方が着床すると双子になります。これを二卵性双生児と呼びます。
二卵性双生児は
・遺伝子が異なる
・性別が異なることもある
・血液型が違うこともある
など、普通の兄弟姉妹と同じ関係になります。
②一卵性双生児
もう一つの双子のパターンが 一卵性双生児 です。これは、 1つの受精卵が途中で2つに分裂することで生まれる双子 です。
一卵性双生児は
・遺伝子が同じ
・性別が同じ
・血液型も同じ
という特徴があります。
発生頻度は約0.4%とされています。
ただ、 なぜ受精卵が分裂するのかは現在でも完全には解明されていませんが、体外受精治療においては1卵生双生児になる傾向が少しわかっています。
双胎妊娠にも種類がある
双子の妊娠では、赤ちゃんを包む膜の構造によって いくつかのタイプ に分けられています。少し難しいですが、施設で稀に伝えられることもあるので最後に見ていきましょう。
双子を妊娠した場合には妊娠初期の超音波検査で膜性診断 が行われます。
膜性診断とは
・胎盤の数(絨毛膜)
・赤ちゃんを包む袋の数(羊膜)
のことです。
その際、双胎妊娠の場合には3つのタイプがあります。
①2絨毛膜2羊膜双胎(DD双胎)
・胎盤が2つ
・赤ちゃんの袋が2つ
それぞれ別の環境で育つ双子です。二卵性双生児は基本的にこのタイプになります。
②1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)
・胎盤が1つ
・赤ちゃんの袋が2つ
胎盤を共有するため、双胎間輸血症候群(TTTS)などの合併症が起こることがあります。
③1絨毛膜1羊膜双胎(MM双胎)
・胎盤が1つ
・赤ちゃんの袋も1つ
同じ空間で育つ双子です。臍帯が絡まるリスクなどがあるため、より慎重な管理が必要になります。

まとめ
いかがでしたでしょうか?双子と、精子が2つ入る受精は大きく違うことがおわかりいただけたかと思います。と同時に、多胎妊娠は体外受精治療に限らず、単胎妊娠よりもリスクがあることもおわかりいただけたかと思います。
現在の不妊治療では 母体と赤ちゃんの安全を第一に考え、多胎妊娠をできるだけ減らす治療方針 がとられています。しかし、それでも起きることがあります。
次回は、なぜ体外受精治療で双子になるのかを深堀していきたいと思います。
本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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