精子について②男性の関わり方、取り組み方

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2025.02.21

基礎知識

精子について②男性の関わり方、取り組み方

妊活は、一般的に女性ばかりがどうしても頑張ってしまうような印象が強いですが、男性側はどのように関われば良いのか分からないといった声もあります。今回は、男性の妊活の関わり方、取り組み方について、元培養士の塚田寛人さんからお届けします。

妊娠するには、卵子の力と精子の力どちらも欠かすことが出来ないことは皆さんご存じかと思います。 しかし、体外受精の技術がヒトで応用されるようになって30年以上経過し、不妊治療という言葉が広がった当初は、女性側も男性側もどちらも治療していることを表面化できない方も少なくありませんでした。

現在もそのお悩みを抱えている方も沢山いらっしゃると思いますが、当初は今のような社会的な取り組みもなかったため、相談できない、自分たちで抱え込んでしまうことが今以上に多かったことでしょう。更に、不妊治療はカップル毎に妊娠に至るまでの期間が異なること、通院にかかる時間や頻度、金銭的負担についての認知度も低かったです。現在もそれは大きく変わったとは言い切れませんが、今以上に大きな課題でした。

男性側に着目すると、そもそも精子が重要であることも知らない、女性側の問題で自分は関係ないと思っていることも多くあるようです。現在は、情報が得やすくなっていることや、不妊治療が保険診療化されたこともあり、そういったことはかなり少なくなってきているのではと考えています。

今はパートナーが妊活に協力的、という調査も

* 医療法人 浅田レディースクリニック

医療法人浅田レディースクリニックが2024年に行った調査によると、パートナーが妊活に協力的だと回答し、妊活に関して話す頻度は「週1」が最多となっているようです。
* 医療法人 浅田レディースクリニック

ですが、まだまだ課題はあるようです。男性パートナーの協力を得ているという回答が多かった一方で、パートナーと妊活について意見の食い違いを経験したことがある人は40.8%という結果も得られています。

女性からいただく相談には、「パートナーにもっと治療に参加してほしい」という声は多くあります。実際、クリニックでもそういった悩みを吐露される患者様がいらっしゃることは知られていますし、「不妊治療や妊活は女性だけの問題ではないから、男性側も診察に参加すべき」と指導するクリニックも増えてまいりました。

しかし、あえて今回は、男性からお問合せいただいたこともある悩みをご紹介しながら見ていきたいと思います。

男性側の悩み


不妊治療をされているカップル、妊活をしているカップル、どちらも女性側からのご質問が多いですが、男性側から寄せられる悩みもあります。


まず、不妊治療に関する質問を除いたお悩みを、多い順番で3つご紹介いたします。クリニックにはもっと様々な質問や悩みが寄せられていると思いますが、今回は下記について掘り下げていきましょう。

  • 1, 妊活(もしくは不妊治療)に協力をしたいが、協力の仕方がわからない。妻が治療に悩んでいるから話をしたいが、接し方がうまくいってないのではないか。
  • 2, 妻だけがクリニックに通うことが多いことが心苦しい、自分もできることをしたい。
  • 3,精液検査で問題はない、妻も問題ないと言われて、妊活をすすめているが、なかなか授からない。本当に精液に問題はないのだろうか?

このように、男性側も悩みを抱えていらっしゃいました。1,2はどちらも、妊活や不妊治療を自分事にしている、奥様やパートナー様を思いやっていることは共通していますし、特に1については徐々に増えてきているように感じています。

女性からいただく質問に、「パートナーにも積極的に参加してほしい」ということがありますが、その中には、こういった「参加の仕方がわからない」といった実情も含まれているのかもしれません。

男性側の参加の仕方


これは、確かに非常に難しい問題だと思います。妊娠するためには精子が非常に重要な役割を果たしていますし、男性側が原因で妊娠しにくいと考えられることも約半数あると考えられています。

しかし、男性側に比べて女性側は、ホルモン測定や卵巣状態の確認などのため都度の通院が必要になってくることや、妊娠判定、お腹に子どもが宿った後はその経過なども見なくてはならないため、男性側よりも通院頻度が格段に多いのです。

男性側にも不妊原因があるとはいえ、これだけ女性の通院頻度が高いと、何もしてない、何もやってないと自分を責めてしまう…これは男女の差もあるため、すぐに解決することは難しいかもしれません。

ただ、これらは「気持ち」をどのようにして相手に伝えるかという問題ですから、やれるべきことはあるのかもしれません。

① 知識の獲得を心がける


これはクリニックでも男性の不妊治療の参加を促すために指導していることが多い方法です。妊娠のメカニズムや女性の身体の仕組みを知ることで、一緒に治療をしている気持ちに寄り添うことができるのではないでしょうか?

更に、先ほども書いた通り、女性側の通院の負担は大きいため、そのストレスも大きなものになるでしょう。ですから、その気持ちのケアをするためにも治療の進行度合いや結果について知ること、そのためには治療について理解することが大切です。

男性側も、通院の際は可能な限り同行し、医師の説明を受けるというのがいいかもしれませんね。 実際の診療では、男性側が医師に治療について聞く、といったケースもよくあります。

一方で、知識の獲得は非常に難しい問題であることは、医師や医療者も理解しています。こと不妊治療領域においては、身体のことを知るだけではなく、卵子や精子といった細胞レベルの知識も必要になってきますが、知識の根底がないと非常に理解が難しいことも少なくありません。逆に少し間違った解釈をしてしまうと、知識の泥沼にはまってしまうこともあるでしょう。

特にネットの情報も選択によっては、間違った知識を得てしまうこともあります。一番おススメしている方法は、「医師に聞く」「通っているクリニックに聞く」というのが最適解だと思っています。クリニックは、それぞれの患者さんのデータを持っています。

つまり、その方にとって必要な方法や情報を持っていると言えます。また、その治療の専門家集団ですから、一番良いのはその人達に聞くことでしょう。 ですが、忙しそうでクリニックに聞きにくい、質問しにくいといった声があるのも事実のため、そういった場合にネットを利用するのも仕方のないことかと思います。

これは業界全体の課題かもしれませんが、少なくともまずは医師や通っているクリニックの医療従事者に質問をする、というのをお心がけいただくのが良いかと思います。

人によっては、クリニックや通われているクリニックの医師へ、どう聞けばいいかわからない、聞くのが怖いといったこともあると思います。そういったときは、妊活コミュニティを利用してみるのも一つの手かもしれません。
オープンチャット:みんなの妊活

同じような悩みを持った方がいるだけではなく、自分の時はどう質問したかなど参考になる意見を聞くことができるかもしれませんね。

② 女性側とコミュニケーションをとる


パートナーとのコミュニケーションも非常に重要です。不妊治療について夫婦で話し合うことは、その後の治療の選択を一緒に考えることにもつながります。 それだけではなく、治療の前や治療後の女性のキャリアプラン、二人のライフプランを話すきっかけにもなります。

妊活される方においては、後者のキャリアプランやライフプランを一緒に考えることは、妊活に非常に重要になってきます。

男性女性関係なく、仕事をするのが普通になっている現在、仕事の都合によってはタイミングがあわないこともあります。そういった時には、「身体を整える期間にしよう」といった前向きな提案をしサポートするのもいいかもしれません。

さらに、妊活の期間、不妊治療の期間はカップルそれぞれで違います。つまり、カップルによっては期間が長くなることもあります。そういった時に、お互いの意見を交換できる、する環境を前もって作っておくことは、非常に重要だと思います。

カップルの関係、これは不妊治療にも大きく影響してくることです。クリニックに来られる患者さんの中にも、コミュニケーションが原因で治療をやめます、といったこともあります

③精液検査の結果だけで判断しない、できることをしてみよう


前回の精子①記事にも書かせていただきましたが、精液検査はあくまでも精液内の精子数や運動率…といった表面的な部分の測定でしかありません。勿論、これは不妊治療の進め方に非常に重要な部分ではありますが、妊娠はそれだけでは達成成立しません。

  妊活においては、精子が卵子と出会えているかも重要ですし、不妊治療の進行度合いによっては「精子のDNA」も関わってきます。「精子のDNA」「質の高い精子」「良い精子」…など色々言われていることはありますが。受精やその後の成長には、精子の運動性だけではなく、精子内のDNAも重要です。

精液内には沢山の精子がいますが、卵子1個に必要な精子は1個だけです。治療のうち、顕微授精治療においては胚培養士が1個の精子を捕まえ、卵子の中に注入しますが、体外受精法(ふりかけ法)にいたっては、複数の精子を1個の卵子にふりかけて受精を目指す方法ですから、どの精子が入ったかはわかりません。人工授精、タイミング法、妊活では、そもそも精子が卵子に到達しているかもわかりません。


更に言うと、1個を選ぶ顕微授精法にしても、その1個の精子が正常なDNAを持っているかは誰にもわからないのです。 つまり、精液検査の結果の有無に問わず、精子の質を考えることはとても重要必要と言えます。


精子の質に影響する要因は、以下が考えられています。


1, タバコを吸わない
2, 適度な射精(2~3日おきが理想と言われています)
3, 健康的な生活

他にも、クリニックによっては睾丸を温めない、サウナを控える…といったこともありますが、クリニックによって差異があるため、上記のみに限定して記載しました。

「1,タバコを吸わない」にいたっては、どのクリニックでも必ず言われると思います。「Cigarette Smoking and Semen Quality: A New Meta-analysis Examining the Effect of the 2010 World Health Organization Laboratory Methods for the Examination of Human Semen - PubMed」のような論文を元に、禁煙を指導していることもあります


「2,適度な射精」においては、精子は毎日作られ続けていて、精子がたまりすぎると、精子が劣化する、質に良くないとされています。つまり、定期的に(2~3日おきが理想と言われています)射精をし、新鮮な精子がある状態に保つことが必要です。


「3,健康的な生活」は、健康的な生活が妊活もしくは治療に必要であることが知られています。クリニックでも、「適度な運動」「健康的な食事」「質の高い睡眠」など指導されることも多いです。
これは女性側も男性側も共通ですから、パートナーとともに一緒に実践することが良いでしょうね。

過去お話した患者さんの中には、同じスポーツ、運動を一緒にするきっかけになり、夫婦間のつながりが深まったように感じるといった方もいらっしゃいました

夫婦で生活すると同じ食生活になることが多いかと思いますから、気を付ける、とまではいかないでしょう。しかし適度な運動は、夫婦一緒に実践する、ということを体現できるため、個人的にもおススメしています。

重要なのは積極性


今回は、お問い合わせにも多い、男性側の取り組み方について書かせていただきました。

どれも、「気持ち」にフォーカスすることが多い内容かと思います。

妊娠は男性と女性二つの因子が関わってきます。しかし、負担はどちらも同じではないことから、悩みや不満がでてしまうのでしょう。男性側も積極性をどう表現すればいいのかわからない気持ち、私も非常によくわかります。

ですが、それは自分だけではなく、他にも悩んでいる方がいますから、まずは実践してみて積極性をアピールしてみるのも良いかもしれませんね。

治療に関係することもあるため、クリニック側から指導されることはありますが、夫婦間の問題は医療者にとっても踏み込みにくい部分もあり、非常にお伝えが難しいことも多々あります。そのためクリニックによってはカウンセラーを設けていることもありますので、夫婦間での悩みなどを相談してみるのも良いかもしれません。

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務を担当。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養業務に従事。クリニック開業に伴う、培養室立ち上げにも参画。現在は、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活で悩む方へのオンライン相談やのほか、株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)へ協力し、企業に勤める女性へ医療情報を提供するなどのサポートを行っている。

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