不妊治療と双子妊娠の仕組みをわかりやすく解説②

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2026.04.13

基礎知識

不妊治療と双子妊娠の仕組みをわかりやすく解説②

前回は、双子ができる基本的な仕組み(一卵性と二卵性)や、医療現場では母子の安全のために多胎妊娠をできるだけ避ける方針であることについてお話ししました。

しかし、不妊治療を検討されている方、現在治療中の方からは、多胎妊娠についてこのような質問や不安の声をよくいただきます。

  • 「体外受精だと双子になりやすいって本当?」
  • 「2個胚を戻した方が妊娠率は上がりますか?」
  • 「1個しか戻さなくても双子になることがあると聞きました」

最近はSNSやニュースでも有名人が不妊治療によって双子を授かったという話題を目にする機会が増えています。また、「海外で七つ子を妊娠」といったようなニュースを見て、中には不安を感じる方もいらっしゃいます。

今回は、体外受精と多胎妊娠の現状と、なぜ不妊治療で多胎が起こるのかについて、詳しく解説していきます。

不妊治療(体外受精)と多胎の現状

■ 世界と比較した日本の特徴

日本は、世界的に見ても多胎妊娠の割合が低く、安全性を重視した不妊治療が行われている国として知られています。

体外受精における多胎率は、

  • ・日本:約3〜4%
  • ・ヨーロッパ:約10%前後

と報告されており、日本は海外と比較しても明らかに低い水準にあります。この差は単なる偶然ではなく、治療方針そのものの違いなどによって生まれています。

■ なぜ日本は多胎が少ないのか?

日本が諸外国に比べて多胎率が低い理由に、「単一胚移植」が標準的なルールとして守られていることが挙げられます。

単一胚移植とは、1回の移植で1個の胚のみを子宮に戻す方法です。

現在の日本では、この単一胚移植が基本方針とされており、多胎妊娠の発生をできるだけ抑える取り組みが行われています。

かつては、妊娠率を少しでも上げるために複数個の胚を移植することもありましたが、その結果、

・早産
・低出生体重
・妊娠合併症の増加

など、多胎妊娠に伴うリスクが明らかになってきました。そのため現在では、「妊娠率」だけでなく「安全性」を重視する治療へと大きくシフトしています

このような背景から、日本では単一胚移植が標準となり、結果として多胎妊娠の割合が低く抑えられているのです。

2個以上の胚を移植することはある?


条件によっては、例外的に2個移植が認められることがあります。

・35歳以上
・複数回の体外受精治療で結果が出ていない場合

ただし、原則として移植できる胚の数は最大2個までとされています。施設や個別の状況によって例外的に検討されることはありますが、非常に限定的です。

このようにかなり厳しく移植個数のルールが決まっているからこそ、日本は低い多胎率を維持することができています。

(参照)
・日本:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12728317/
・ヨーロッパ:https://academic.oup.com/humrep/article/40/11/2038/8262033

なぜ多胎妊娠は起こるのか?(治療との関係)


ここまで、日本では多胎妊娠が抑えられていることを説明してきましたが、では実際に、どのような場合に多胎妊娠は起こるのでしょうか。実際のデータをもとにした研究を参考に見ていきましょう。

(参照)
https://www.cambridge.org/core/journals/twin-research-and-human-genetics/article/exploring-the-link-between-parental-sociodemographic-characteristics-and-multiple-births-insights-from-national-birth-data-in-japan-19952020/22386DE890E0696D3684136BFFB67BB7

 多胎妊娠の背景

日本の出生データ(1995〜2020年)を解析した研究では、多胎妊娠は、年齢や社会的背景と関連していることが示されています。

例えば

・年齢が高いほど多胎率は上昇
・社会的に安定した職業層ほど多胎率が高い

といった傾向が確認されているようです。

 なぜこのような違いが生まれるのか?

この理由として考えられているのが不妊治療の関与です。この研究では、不妊治療の有無そのものは直接記録されていませんが、社会的背景によって不妊治療の利用率が異なる可能性が指摘されています。つまり、不妊治療を受ける機会が多い人ほど多胎妊娠の確率も上がる可能性がある、ということです。

実際の臨床でも、「排卵誘発によって複数の卵子が育つ」「条件によって2個胚移植が選択される」といった場面では、多胎妊娠の可能性が必然的に高くなることが知られています。

ここで重要なのは、これらの治療の選択には、年齢が深く関わっているということです。年齢が上がると、妊娠率を少しでも高めるための治療が選択されやすくなる。その結果、多胎妊娠の確率が上がるという流れになります。

一般不妊治療(タイミング法・人工授精)で双子は増えるの? 

タイミング法や人工授精(IUI)といった一般不妊治療でも、双子などの多胎妊娠のリスクがあることが知られています。自然な生理周期では、通常1周期に育つ卵胞は1個です。

しかし、排卵障害がある場合や妊娠率を高めたい場合には、「排卵誘発剤」を使用します。排卵誘発のメリットとしては、排卵のタイミングをコントロールしやすくなることや、排卵障害の改善、複数の卵子が育つことで妊娠率がやや向上する点が挙げられます。

一方で、卵胞の発育を完全にコントロールすることは難しく、想定以上に複数の卵子が育ってしまうことで、多胎妊娠となる可能性があります。実際に、予期せず双子や三つ子を授かるケースもあります。

こうしたリスクを避けるため、海外のガイドライン(ASRMなど)では、多胎のリスクが高い場合には治療を中止することが推奨されています。例えば、16mm以上の卵胞が2個以上、または14mm以上の卵胞が3個以上確認された場合には、その周期の治療を見送ることが検討されます。

 体外受精で双子が起こる理由

体外受精において双子が起こる原因は、大きく3つに分けられます。

・2個以上の胚を移植した場合(二卵性双生児)
・2STEP(2段階)胚移植など、複数胚を段階的に移植する場合(二卵性双生児)
・1個の胚が分裂した場合(一卵性双生児)

それぞれについて見ていきましょう。

2個の胚を移植した場合(二卵性双生児)

まず一つ目は、2個の胚を子宮に戻した場合です。それぞれの胚が着床することで、双子(=二卵性双生児)となります。

不妊治療では、妊娠に至らない原因の多くが胚側にあると考えられているため、着床のチャンスを少しでも高める目的で2個移植が選択されることがあります。2個の胚のうち、どちらかに胚側異常があったとしてももう片方に問題がなければ着床するだろうという考え方がわかりやすいかと思います。

研究データでは、

・2個移植:妊娠率 約46%/双子率 約13%
・1個移植:妊娠率 約27〜35%/双子率 0〜3%

と報告されています。

(参照)
Number of embryos for transfer in women undergoing assisted reproductive technology (ART) | Cochrane

妊娠率を上げる一方で、多胎のリスクも大きく上昇するという点が重要です。

2STEP(2段階)胚移植など、複数胚を段階的に移植する場合(二卵性双生児)

また、二卵性双生児につながる方法として、2STEP(2段階)胚移植法などがあります。胚は子宮内膜に対してさまざまなシグナルを送り、内膜を着床しやすい状態に整える働きがあると考えられています。このような胚と子宮内膜の相互作用は、「クロストーク」と呼ばれていますが、
2STEP移植では、この仕組みを利用し、

1.まず初期胚(受精後2〜3日目)を移植して子宮内膜を刺激
2.着床しやすい環境を整えたうえで
3.数日後に胚盤胞(受精後5〜6日目)を移植する
という方法が取られます。


「着床の準備を整えてから本命の胚を戻す」治療法と考えられています。この方法により着床率の向上が期待されてはいるものの、結果的に体内に2つの胚を移植することになるため、1個移植と比較すると双子(多胎)の可能性は高くなると考えられます。

1個の胚が分裂した場合(一卵性双生児)

こちらは、1個の胚を移植したにもかかわらず分裂して双子になるケースです。これは一卵性双生児と呼ばれます。一卵性双生児の発生頻度は、

  • ・自然妊娠:約0.4%
  • ・体外受精:約1%

とされており、体外受精ではわずかに増加する傾向があります。分裂が起きるメカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。

①胚盤胞培養の影響:胚を胚盤胞まで育てる過程で、胚を取り囲む膜(透明帯)が固くなり、細胞同士の接着が弱くなることで分裂しやすくなる可能性があります。

②アシステッドハッチング:透明帯に人工的に穴をあけることで、胚が外に出る際に細胞が分かれる可能性があります。


(参照)
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282%2818%2932151-4/fulltext
https://academic.oup.com/hropen/article/2023/4/hoad035/7273786

③ストランド現象

最近の研究で、胚盤胞の内部にある将来赤ちゃんになる細胞(内細胞塊:ICM)と、別の場所をつなぐ「ストランド(糸状の橋)」のような構造が発見されました。このストランドを通じてICMが分裂する、もしくは新しいICMが形成される可能性があり、一卵性双生児の原因ではないかという説が注目されています。


(参照)
Morphokinetic features in human embryos: Analysis by our original high‐resolution time‐lapse cinematography—Summary of the past two decades - PMC

つまり、体外受精における双子は、「複数の胚を移植する」や「胚が分裂する」という大きく2つの仕組みによって起こります。体外受精そのものが双子を作るわけではありませんが、治療の方法や体外環境の影響が重なることで、双子が生じる可能性があるという事は知っておいても良いかもしれません。

【まとめ】

2回にわたり、双子の仕組みと不妊治療との関係について解説してきました。不妊治療では「妊娠すること」に意識が向きがちですが、本当に大切なのは「安全に出産すること」です。現在の不妊治療では、単に妊娠率を追い求めるのではなく、母体と赤ちゃんの安全を最優先に考えた治療が行われています。

そのため、単胎妊娠(赤ちゃん1人)を基本とする方針が広く採用されています。妊娠率だけでなく、安全性とのバランスを考えながら、ご自身に合った治療を選択していくことが大切です。

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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